石二つ
雨の日も
風の日も
信頼を分かち合い
ただそこにある
そうしてともにあること
ただあること
それだけのことができない
疑念は常に起こり
信頼を失う時
二つの石は
ただともにあることができない
夫婦でも親子でも
信頼は失われる
雨の日も
風の日も
信頼しあいある石
今日は秋日和
日が石にさして憩う
人と人は信頼が大事
何事のなけれど
無言に信頼を分かち合う石
石二つ
雨の日も
風の日も
信頼を分かち合い
ただそこにある
そうしてともにあること
ただあること
それだけのことができない
疑念は常に起こり
信頼を失う時
二つの石は
ただともにあることができない
夫婦でも親子でも
信頼は失われる
雨の日も
風の日も
信頼しあいある石
今日は秋日和
日が石にさして憩う
人と人は信頼が大事
何事のなけれど
無言に信頼を分かち合う石
石と山茶花
沈着静謐にして
石は今日もここにあり
ここにありて動かじ
静かなる営み
禍のなかれ
冬の日に安らふ
見えざる庭の奥
山茶花がひっそりと
人知れず咲いている
片隅に謙虚なる石
長年連れ添う
信頼の石
悪しき念は石よりい出じ
また受け取ることもなし
飛ぶ原生の鳥の力
鳥は生きる術を神から与えられている
翼と鋭い嘴、枝をつかむ鋭い足指
鳥は神から与えられたものしかない
何ものも身につけない
澄んだ冬の大気の中を翼で翔る
その力強い羽ばたきの音がひびく
その足指は枝をぴったりとつかみわたり飛ぶ
林の中で鋭く鳴くと鳴き返す仲間の声
それが冬の林に木霊する
鳥が飛び鳴く時、それは全く自然そのもの
心底から鳴き全身の力で飛ぶ
それが大気に林にひびきわたる
粛然と冬の樹々にも岩にも厳しくひびきわたる
野生の生き物は常に全身でその場で力を尽くして生きる
いかなる道具も使わないで生きる
人間は道具なしでは生きることができない
車なしでは生きることができない
車はすでに道路や石油やら鉄やら文明の塊りだ
自転車くらいならまだいいが
車は文明を凝縮したもの、文明そのものだ
人は車を使うことにより自然の反対軸に立つ
人間は鳥のように飛ぶことも鳴くこともできない
車は騒音をまきちらし大気を汚す
自然の中で本当に生きる力を感じるべき
それは歩いても走っても自転車でも感じるもの
もうやたらモノを作り運ぶことはやめるべき
人間は生まれた大地を踏みしめ
その大気を感じ原生の自然の感覚を取り戻すべき
まだ歩く力、走る力、自転車を漕ぐ力がある
はじめて踏み入る山の奥
冬の朝日さして日本の樅の木
それは限りなき寂けさの中に佇立していた
まるで千年忘れられて立っていた
石の大聖堂の柱のように立っていた
そこには何の音も聞こえない静寂境
その樹には何がひびいたのか
ただ清らかな水の音がひびく
そのあと木枯らしが吹き唸った
木の葉は舞い散り山路に落ちる
その堂々たる樅の木二本の荘厳
その静粛にして静謐な引き締まった姿
その樹はここにどれくらい立っていたのか
ここに私は踏み入ることなく知らざりき
長年ここに住みこの樹を知らなかった
私は一体何を求めてきたのだろうか
騒音と雑踏の大都会を彷徨い
私は何を求め何を得たのだろうか
ただやたらに衝動にかられ動くばかり
もう老いてすでに死も近いというのに・・・
私は何を求め何を得ようともがいていたのか
虚しい徒労はなおつづいていた
そして今この二本の樅の木に出会った
この樹はここにどれくらい立っていたのか
ここで何もせずに延々と立っていた
雨がふり風が唸り雪が降りここに立っていた
限りない静寂のなかに・・・・・
やがて山は落葉に埋もれ雪に埋もれるだろう
あなたはここでただ静に耐えて立っていただけ
静に無言にただ耐えること
そうして長い年月の中にあなたの真価が顕れた
石の大聖堂の柱のように立っていた
私はあなたの真の価値を知らなかった
そうしてここにあなたは無言に立っていた
そこにあなたの価値は形成された
その歳月は長く人の命よりも長い
あなたは山の奥で風の音を聞いた
数知れぬ風の音を聞いた
その風の音とともにあなたは静まっていった
その限りない静粛な姿が胸を打つ
ただ私は人は無益な日々を積み重ねた
人は社会はあなたのような静寂に至ることはない
冬の日の朝に佇む姿を人はまねることはできない
旅人は飄然とやってくる
旅人は飄然とやってくる
道は果てしなくつづき
旅はいつまでつづくのだろう
木枯らしが唸る
木の葉を吹き散らす
道はまた分かれる
旅の道は尽きることがない
旅人は飄然とやってくる
どこへ行くのか知らじ
旅人はどこへ消えたのか
旅人を連れ去ったの風なのか
風はごうごうと唸り吹き
旅人の消息は絶えた
旅人は飄然とやってくる
一陣の風のようにやってくる
そして飄然と去ってゆく
旅人の残したものは何か
何ものもなし
ただ風が唸っている
人の残したものは何か
ただ夢の跡なり
夢幻に消えし跡
風は唸っている
ごうごうと唸っている
岩打つ激流の音がひびく
旅人はかなたに去れり
一瞬にしてすべてを失う
訪れた平和の日
静かなる冬の日
穏やかに陽はさしている
誠実な日々がある
争わない日々がある
尽くし尽くされる日々がある
石と石は相対して
誠を示して偽りがない
苦しみのあとに安らぎがあり
矛盾と混乱のあとに調和がある
新しき芽が庭に出て
新しき人がそこにある
我が家を作りしものに感謝する
我が家に平和が訪れた
神の祝福はここにある
死者よ安らかに眠れ
もはや平和を乱すなかれ
なお寒菊はここに咲き
長寿を保ち神の祝福がある
私は神に心から感謝する
苦しみのあとに安らぎがあり
矛盾と混乱のあとに調和がある
神は良き計らいをして
思わぬ結果を与えてくれる
それは個々によりて違うもの
ただ誠実に苦しくも
己が勤めを果たせ
神はそを知り良き計らいをして
村人は支えあって生きている
冬木立のようにしんみりと
その中に名もなき人の
粗末な墓が埋もれている
村は互いに支え合い成り立っていた
都会は流砂のように人を押し流す
一つの経済的単位部品として
もはや人は人としてありえない
人と人が支えあうには巨大すぎる
人はそこで盲目の働き蟻とされる
摩天楼が何を意味するのか
それは意味なき蟻塚なのかもしれない
村は人が一本一本の樹のように
深く大地に根付き質素ながらも
冬木立のように支えあっている
岩と岩が向き合う存在の重さがある
冬の日の岩一つ
one big rock
the deeply silenced strength
一つの岩
何もまとわない岩
その硬質な岩
原生質の岩
冬の日の静寂
ただ光を帯びて
厳然として
重みをまして在る
黄金の光につつまれる
一つの岩
何もまとわない故に
その岩は岩たりえる
その岩にしみ入る寒さ
氷柱が垂れる
そこに岩は動かず
ただ深く黙して
ここを我が場所と
千歳動かざる
黄金の光につつまれて
患いなくもここにし眠る
夜更けてかなたに
誠実な星が一つ輝いている
石は知り星も知る
たとえかく離れていようとも
真実なるものはひびきあう
静粛な冬の夜更けひそかに・・・
春の日が部屋にさして
花が二つ明るくよりそい咲いている
赤い花と紫の花
ともに映えつつ咲いている
そこに争いはなく調和の美
花はともに愛し合っているよう
その色を尽くしてともに咲いている
家族すらともに愛し合い調和しない
長い間私はそういう家族にあった
他にもそういう家族はある
家族すら愛し合えない調和しない
それがこの世の家族であった
その期間は余りにも長かった
私の願いは家族が愛し合い調和すること
この二つの花はよりそい愛し合っている
だからさらにここに美しさは増している
いつくしみ愛し合うのが家族
それがない家族は家族だったのか?
家族が愛し合うからこそ
この花の美は家に映える
家族がいさかうなら花も映えない
家族でなくてもこの世に自然の美は映えない
国と国は争い、争いはやむことがない
愛し合わない争い憎しみが絶えない
だから自然の美は映えない調和しない
その痛みは深く傷は癒えない
望むものは愛と調和
平和の日が長くつづくこと
巨大都市、東京は存在したのか
ごご-がが--ぎぎ--がちゃがちゃ
なんだかあちらこちらうるさい音
百万人の人とすれちがったが
みんなあっいうまに消えた
その人の顔も何も覚えていない
何か一人くらい一つくらい覚えてもいいはず
なぜか現実味なく消えてしまった
そんな大都市があったのかどうか
どうしても記憶に残らない
田舎の一本の枯木
夕日に長い影を帯びている
いつまでも長い影を帯びている
悠長な時間に記憶させるかのように
大島のイソヒヨドリ
大島の海岸に溶岩の赤
鮮やかに映えて磯伝い
飛び回るイソヒヨドリ
その胸は溶岩の赤色
島は海の碧と森の緑
三光島の美声のひびく
大島はなお火山の島
煙吐き溶岩の形造る島
椿の燃え咲く島
東京湾に近く迫る島
伊豆七島の連なる一つ
連帯する樹影
田舎の連なる中の一本の枯木
夕日に長い影を帯びている
いつまでも長い影を帯びている
悠長な時間に記憶させるかのように
それぞれの木に癖があり
一本一本が違っている
人間にもそれぞれ性格があり癖があるように
枝と枝の影がもの言わずまじりあっている
互いに触れることもせず交じり合う樹の強さ
大地の上に立ってゆるぎないそのひきしまった姿
大地の上につながっているその簡素な姿
人は絶えず協力連帯を叫ぶ
しかしここでは深い沈黙の中に人知れず
互いに大地の上に強く結び合っている
連帯を叫ぶものに連帯はなし
連帯は声なくもありその連帯は持続的で強い
本当の連帯とは個々に独立した連帯
ここに立つ一本一本の樹は独立して立ち
深い沈黙の中に連帯している
静かなるもののなかに真の力が宿る
騒擾の中に真実は宿らない
その結びつきは声に出さずとも
根は大地につながり強固である
ここでは連帯を叫ぶ必要がない
連帯は敢えて己を主張することではない
己のエゴを殺すことが連帯に通じる
本当に愛しているものは言葉で言う必要がない
それほど連帯は強固なのだから
枯木の影が交じり合う写真がうまくとれてなかった。木は影からその表情を知ることができるの一面である。
これネットから拝借した。煉瓦の建物がありマッチしている。建物はここでは消している。
大地に深く根を張る樹々の列
樹々は争わない、平和の連帯
互いにののしり憎しみとがめることはない
樹々の枝の影は静かに交差して
人と人との間にも国の間にも争いは絶えない
樹と樹はいまだかつてその争いを知らない
大地の上に深く根を張り力強く連帯する
樹々は何かに向かって攻撃することがない
それぞれ己の内に充足して立っている
敵に向かって連帯するのではない
静かに深く自らに充足している平和の連帯
これこそが正に揺るがざる連帯
その信頼の握手には嘘偽りがない
信頼に満ちているからこそ無言である。
それは一時的なものではない永続的である
ののしりとがめにくしみ恨みねたみがないこと
すなわち争いがないことは奇跡的である
人間はなぜ調和しないのか平和がないのか
そもそも平和がいかなるものか知らないから
平和の見本となるものがないから
その見本は樹々にありその内実を知ること
樹々が造るのは荘厳な神の宮居である
神は争う所には決して存在しない
日々争いに乱される場所調和なき世
人はそこでいくら働いても疲れるだけ
そこに真の実りはなく虚しくされる
人は切なくも連帯を欲し平和を欲している
人の世界には見つけがたいもの
内なるものに力強く連帯する樹々を知れ
その平和の連帯を知りて人の連帯もある
その聖なる神の宮居に日々花は献げられる
聖なる調和する樹々
枯木の枝と枝の影さしぬ
冬菜の畑に長く伸びにし樹の影
静謐な陽は移りもの音もなし
ここの樹々の列の心にしみぬ
日々ここを行きて何事もなし
しかし我深く思いぬ
樹は樹を傷つけることなし
人はいかに傷つけあうことか
樹は決して他を傷つけない
それが奇跡的である
樹は聖者なのかもしれない
樹は何を語ろうとしているのか?
樹に寄りて耳を傾けよ
その素直なる直ぐなる静粛なるもの
欲少なき簡素な質素なるもの
その下に憩え癒されよ
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今日も陽はやさしく静かに照っている
樹はそのやさしい光に欲している
神の愛のようなその冬の日の光
そして山脈に満足に陽は沈んでゆく
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
樹は決して他を傷つけない
枯木の枝と枝の影さしぬ
そこにいかに深い平和のありしや
調和の日々はここにある
自然の限りなき静粛の平和を知れ
そを知らずして真の平和なし
その身近にそが探せし平和はあるべし
平和は叫ぶにあらじ沈黙の中にあり
欲少なき質素なる生活にあり
その歩む足音のひそけさよ
花の記憶
花に記憶されたものは
明るい一杯の春の光
美しい蝶がとまり
聞こえての小鳥のさえずり
花に記憶されたものは
明るい一杯の春の光
花はまたその光の中に
心地よく咲くことを願う
そこは天国かもしれぬ
この世あったのは罪の記録
延々とくりかえされる罪悪の記録
この罪悪にいつ終止符が打たれるのか?
カインの末裔は消えることはないのか
花に記憶されたものは
冷たい雨もあったが
明るい一杯の春の光
今年も椿がひっそりと散った
その杉木立に隠れるように
粗末な石くれの墓群れがある
名前も定かではない
ここで暮らしてこの村で死んだ
いろいろなことがあったろう
今は静かに眠っている
今年も椿がひっそりと散った
清らかな流れがひびき
蝶が一羽は流れにそって舞い
細い樹々の影が枝をさしかわす
この道を通る人はまれなるがよし
死者の眠りを乱してはいけない
安らかに眠らすがよし
争わない石と石
石と石は争わない
石と石は傷つけあわない
千年そこにいつもいる
それは奇跡的なことだ!
それが本当の平和なのだ
人はどんな人も傷つけあう
石と石は傷つける言葉を吐かない
石は無駄なことはしない
沈黙して原生圏の静謐を乱すことはない
深い信頼で結ばれそこを動かない
石は特別でしゃばろうとはしない
石は神に与えられた場所に
定められた場所にいて誠を尽くす
人にはそれぞれの定めがある
その定めに逆らうことはできない
与えられた場所で定められた場所で
誠を尽くして生きる他ない
定めの場所を出てもうまくいかない
平和はありふれた場所にあった
平和は特別な場所にあるわけではない
何気ない日々の生活で平和は実践される
石と石は争わない
石と石は傷つけあわない
千年そこにいつもいる
日影に眠る森のニンフ
森のニンフが深い木陰に
心地よく休み寝入っている
そを目覚めさすなかれ
夢の中で蝶々が舞っている
清らかな水の音が聞こえる
かすかにトウスミトンボが飛ぶ
深い森の常陰に眠っている
そよそよと涼しい風に寝入っている
千歳の苔むす岩を枕にして
冷たい滝壺には岩魚が隠れ
黒揚羽が一羽ダンスをしている
その山の道を通る人はまれ
ただ涼しい風が通りすぎるだけ
鳥は甘い木の実を食べて
葉陰に一時休んでいる
そのさえづりは森の奥深くひびきあい
静謐の森に甘美な歌は高鳴る
何か不足があるのか
誰も不足は言わない
白い薔薇(最期に見るべきもの)
余命いくばく
何を見るべき
庭に清楚な白い薔薇
涼しい風がそよぐ
人の悪しき面を見すぎた
最期は白い薔薇を見る
それは人の心でもある
最期に見るべきものは
美しく清らかなもの
その花を心に秘めて
この世を去るがよし
金のことにもかかわらず
そのかたわらにあるもの
良き人であってほしい
さすれば心安らかに看取られて
その愛の手ににぎられつ
来世に旅立つだろう
現世の醜きものを見すぎた
最期は清楚な白いを薔薇を見て
来世に旅たつが良し
心清める白い薔薇
日影に涼しい風がそよでいる
山の奥の常陰に
億年隠されし岩
今我が前に顕われぬ
そは知られるざるかな
世の事を世の移りを
ただここに億年隠されぬ
世に何か意味あれや
虚しく費やされし命の多さ
何故か知れじ
ただ塵と消えにしを
虚しく使役されしものよ
サタンに使役されしものよ
実りとならず消尽されしものよ
この岩の何を語るや
愚かなる世よ、人よ
世の騒擾よ、混乱よ
そは変わらざるかな
この岩の何も成さず
その威厳ある姿よ
川烏は隠者のごとく
さらなる川上に消えぬ
老鶯の声はここにひびき
雨に濡れて。
独り。
石がいる。
億年を蔵して。
にぶいひかりの。
靄のなかに。
(草野心平)
夏の日の旅人
旅人よ、さらに遠くに行けよ
海の彼方から吹きくる風よ
岩礁に波しぶき、かもめ飛び
はるかなる海から吹きくる風よ
夏の日その風の涼しき
天来の翼を広げよ
雄々しき翼を広げよ
遠きかなたを目指して飛躍せよ
地球は広い、地球の風を受けよ
熱い地球の鼓動を体で感じよ
ミズナギドリは地球を半周して飛ぶ
大いなる地球こそそが故郷
汝の視界を夏の日に拡大せよ
新しき視界が開け神の広い世界を知れ
エデンの園の木の実
のろのろ道をよぎるのはでんでん虫
大きな桑の木陰に休む
そしてほうばる桑の実は美味
それはマナでありエデンの園 の食料
風は涼しくそよぎ平和な日々
なお知られざる庭園の小道の花を愛でる
美しい尾長が飛んで来る
禍と労苦の日々はそこにない
罪はまだそこに生まれていない
揚羽蝶が空高く舞い上がり
その美しい紋を披露する
立葵が陽ざしを一杯に受けて咲き
蜂を蜜を探して盛んに羽をうならせる
夏の日に様々な命がよみがえる
私の仕事はただ木陰に休むこと
エデンの園に甘美な実は豊富である
尽きることなく労苦なく与えられる
うっとりと大きな花は憂いなく咲いている
労働はすべて良きにあらじ
働くものをして働かせしめよ
無闇な労働はエデンの園の静寂を乱す
石の沈黙を学び神に従順に仕える
その幸いの日は長くつづくだろう
神の知恵は深く人は及びつかない
山の村の石一つ
山の村の道の日陰に休む
そこに石一つがある
誰も責める者はいない
そこを通る人はまれである
お客人ここにゆっくりお休みください
何も売りつけもしないし
客人をせかしたりはしない
あなたはそこにお休みください
誰もあなたをとがめたりしません
森に鳥のさえづりがひびく
悠長な時の流れにまかす
山の村に長い日影がのびる
木の影は日時計のように移る
時計の時間にせかされることはない
あなたはこの村になんのために来たのですか
ただ休むために来たのです
日陰に石一つ安らいでいる
それが平和な村なのである
石と石
離れずここに
幾年月
雨の日も
風の日も変わらず
ここに定めと
動かざるかな
花もこの台のごとき
石に散るかな
身近にありて
頼もしきものなれ
もの言わずとも
互いに親密に
知り合いぬ石と石
身近にあればこそ
石と石は通じ合いぬ
幾年月の石の重みよ
さらなる日を重ねて
動かざるかな
石と石は語らざるも
躍動する自由奔放なる夏の雲よ
今日も空前面にわきあがる
神のキャンバスは空全体だ
無限大の空がキャンバスだ
夏の雲は思い切りその空に
思いのままの形を作る
地上では向日葵に鬼百合にグラジオウラス
今は盛りと競い咲き真昼の陽ざしが明るい
雲の峰はぐんぐんと高くなり雷が鳴る
神の声のごとくに雷が轟きわたる
かなたには大洋が広がり波がひびく
高く飛翔する鳥よ、太陽が眩い
大空に大洋に轟く雷よ
新たなる力を放て放電せよ
神は力に満ちて衰えを知らじも
灼熱の太陽は神の巨大なエネルギ-なり
そのエネルギ-の尽きることのなし
太陽は燃え盛り雲は躍動し樹林に風はそよぐ
壮大なる大空のキャンバスよ
今日も思いのままに躍動する雲の姿
力に満ちて自由奔放なる夏の雲よ
神の声のごとくに雷が轟きわたる
小さき殻を破れ、大いなるものに触れよ
汲々として世を脱しえざるものよ
大空に轟きわたる神の声を聞け
そは何故に地上に綿々と呻吟したる
人は地上に蟻のごとく生きる
大いなるものの声を聞け
停滞と頽廃を打ち破る雷の轟き聞け
躍動する地球の鼓動を聞け
見よ、あんぐりと口を空けて神は空に眠る
そこから大きな笑いが木霊する
自由奔放なる夏の雲よ
自然のエネルギ-は尽きることがない
神のエネルギ-は尽きることがない
神の声は大空と大洋にひびきわたる
神のエネルギ-に満ちた世界に生きよ
そのエネルギ-は無限大にして尽きることがない
口から出るものは、心から出て来ます。それは人を汚します。悪い考え、殺人、姦淫、不品行、盗み、偽証、ののしりは心から出て来るからです。これらは、人を汚すものです。
(新約聖書 マタイの福音書 15:10〜20)
平和とは何だろう
平和とは他者を傷つけないこと
なぜ人と人は傷つけあうのか
なぜ人の世界に戦争が絶えないのか
それほどまでに憎しみあうのか
殺し合わねばならないのか
自然界では妄りに命は殺めない
人間だけがなぜこんなに殺し合いまでするのか
平和と何だろう
平和とは他者を傷つけないこと
遠き最果ての地にでんでん虫三匹ほど眠っている
線路が伸びているがしんとして電車はなかなか来ない
でんでん虫は他のものを傷つけることはない
己の平和の中に安らかに眠っている
そこを乱すものは誰もいない
清らかな流れを鮎がさかのぼり
涼しい木陰の淵に身を隠す
湿地帯に菖蒲が咲いている
何ものも乱すものがない
この世は外から汚れるのではない
あなたの口から出るものにより汚される
あなたは口をつつしむことができない
何もしなくてもその口から出るものが汚す
でんでん虫のように安らかに眠ることはできない
善とは悪を成さないこと
積極的に善行することではない
でんでん虫のように人を傷つけない
そこに平和があった
そうした単純なものが平和だった
遠い幸せの記憶の無人駅
a happy memorial station in the distance
遠い北の果ての無人駅
気ままにぶらりとおりたその駅が
心の中に記憶されていた
線路を歩むもなかなか電車が来ない
でんでん虫が何匹か眠っている
清らかな流れを魚がさかのぼり
木陰の淵に隠れて涼しも
幸せとは何だろう
でんでん虫は互いに傷つけあうことはない
樹々も石もそうである
生き物はみだりに傷つけ合わない
人はなんでこんなに傷つけあうのだろう
殺し合うまで傷つけあうのだろう
北の果ての無人駅
でんでん虫が安らかに眠っている
誰も傷つけることもなく
光はしんとして静寂に満ちている
そのでんでん虫と清らかな淵に眠る
魚を乱し驚かすなかれ
揚羽蝶はまた別な花に移り飛び
立葵は真昼間明るく咲いている
旅人はまたいづこかへ去る
そういう自由な日々がなつかしい
思い出は遠い北の果ての無人駅に帰ってゆく
そこにいたことが私の幸せの時と場
私はいつもそこを思い出し慰められる
人よ、そういう幸せの思い出を持つべし
そこを思い出すと幸せに満たされる
何でもないそんな所に幸せがあった
冬は万物の眠りの季
純白の静謐の衣をまとい白鳥は眠りにつく
鴨の群れも侍従のように眠りにつく
山も樹も石も眠りにつく
互いに傷つけることなく
平和がそこにあり深い眠りにつく
人のみが乱れ心が休まらない
人のみが絶えず傷つけあいぬ
人の騒擾は終わることがない
冬は万物の眠りの季
死者も今は騒がず深い眠りにつきぬ
やがて雪が再び大地を覆い
地上の汚れを覆い隠す
大いなる自然のリズムに合わせるがよし
人のいかに文明に誇るとも
大いなる自然にかなうことなし
自然に人は従い生きるが定め
冬は万物の眠りの季
自然に逆らわず眠るべしかな
故郷の刈田の畦に残り咲く
野菊のあわれ日も暮れむ
この世は広き誰か棲む
冬の灯ともりぬ
誰か棲む貧しき家や
豊かなる時代にそぐわず
人は今貧しさに耐えざりき
人知れず貧に耐えて生きられじ
人は貧しく目立たず勤るは硬き
富と誉れを追い求む
欲望の炎は熱く燃えにき
金得ることのみぞ願いなり
人と人との信はなしも
ただ富める人のみ羨み
自らの貧しきに耐えざりき
みな貧しと思いば貧しからず
富むものと富まざるものの差
その差の大きければ人は苦しむ
今はより貧しさに耐ええざるかな
刈田の畦に残り咲く野菊を
我は愛しむも年は暮れなむ
我が墓の前を日々通りて・・・
故郷に姉を呼べども来たらず
母を呼べども来らず
楽しき時は今や一時の夢なりしや
病院に一人臥しつつあわれ
ただ一人し苦しみ
ただ一人し泣きぬ
頼める人そなしも
我が悲しみそだれかしる
誰もしらざる見捨てられしも
人の世の非情よ、無情よ
身にしみて我は知りにき
白き木槿の咲き雨しととふる墓前
我は行き来しつつ日々暮れにしを
人の世のその終わりや
ただ悲しみの深く あわれなるかな
ああ 逝きにし人は帰らじ
ただ面影のみを追うのみなるかも
再びまた熱き血の通いぬ温かき手を握りたしを
この世にあるも一時人は永久に別れゆく
冷たき墓石の下にもはや声なしも
遂に参らざる墓ともならむ
苔むして見捨てられにし墓ともならむ
信頼を作る時間
石と石
樹と樹
信頼を培う歳月
その日は長しも
冬の日さして
何事のなけれど
日々信頼を培う日
その時間は無益にあらじ
時間の中でさらに固く
互いに結ばれぬ
老夫婦のごとく
何も言わずも相手を知る
二人の間に沈黙は深まる
冬の日の静けさ
言うべきことの少なきも
心は深く通いあう
それも長い時間により
歳月を重ねて作られしもの
信頼は即席には作られじ
長い時間のなかに
大地に根を張る樹のように
静かに潜行して作られぬ
大地の眠り(意識されない大地(地球)や宇宙)
大地の深々とした眠り
原子爆弾も通じない
大地の計り知れぬ底深さ
その地層の億年の厚み
文明がいかに巨大化しても
その破壊力は大地に及ばない
記憶は化石と化して
大地は深々と眠りぬ
シベリアの凍土にマンモスは眠っていた
太古の命の記憶が残っていた
我々はこの大地の上に何を残すのか?
揺るぎない大地の上に我々はある
その表層に文明の興亡はある。
億年の大地の上に興亡ははかない
文明は地球を破壊できない
以前として大地にに神の力が宿っている
その計り知れぬ大地から命の糧は得られる
金銀が宝ではない、大地そのものが最大の宝
その大地の上に安心立命がある
不動の岩は据えられて動じない
文明の騒擾はその大地の上の傷
しかし大地の深部に達することはできない
地球は文明を凌駕する大いなる存在
人間は地球を越えることはできない
億年の大地は永久なる命を保つ
文明の過剰の活動をよそにして
今は大地は深々とした眠りにつく
やがて文明の記憶も化石と化して
大地はさらなる深い眠りにつく
大地は騒音化した文明を記憶しない
文明は一時の大地の表層の上の幻想
文明はその上のあがき、もだえ,苦悶の標し
進歩、発展はさらなる新しい苦を作り出す
人間は終わることのない苦しみをつむぎだす
新しい発展は新しい苦のはじまり
大地は余りにも大きいが故に意識されぬ
宇宙もまた大いなるが故に意識されぬ
神の広大無辺の世界は人間の意識を越える
宇宙も地球も決してその巨大さを意識されない
人は蟻のごとく鼠のごとくその表層を動き回る
しかし大地は微動だにしない
悠々として永久の命を保つ
その大地の上に巨大な山岳が聳え立つ
堂々たる山岳が辺りを領して聳え立つ
地は成りて悠久の日がそこにあり
玲瓏の湖は底まで澄み鏡となり
悠久の大地は微動だにしない
地層は重なり永久の命を保つ
人間は目の前のささいなものは絶えず意識している。しかし大きなものは意識されない、空気が一番大事なものだが意識されることはない、大地も普通に意識されない、しかし大地があって人間の食料は供給されている。その肝心な大地は意識されないのだ。最も大事なものは人間は意識されない、その意識されないものが人間を本質的に生かしている。地球であれ大地は大きすぎるから意識できないのである。人間の意識はそれだけ卑小であり目の前のものしか意識できない、人間を支えているのが大地であり地球であり宇宙だということを意識できないのである。それは創造主の神の領域でありそれは人間では意識化されない、計れないからそうなっているのだ。でもその人間の意識を越えた大いなるものがあって万物は存在しえる。文明がいかに発達してもそうなのである。文明のなかで人間はあくせく生きることに追われているからその大いなるものに気付かない、人間の卑小さに気付かないのである。自我の小ささに気付かない、人間は文明に生かされているのではない、そうした意識できない広大無辺な世界を領する神に生かされているのだ。その中での自我は微小な点にすぎない、地球大地があって人間も生きられるのであり文明があって人間が生きられるわけではないのだ。
だから安心は金銀をたくわえても貨幣に頼ってもえられないのだ。そもそも安心の基は文明にはない、紙幣でもいつ紙屑になるかもしれない、一時期維持されているにすぎない、文明が余りにも巨大化したとき文明にすべてを頼り文明しか見えなくなっている。でも石油がなくなろうが金銀がなくなろうが金属がなくなろうが大地があれば食料は得られる人間は生きていける。その大地は太陽は消失することはない、例えあったとしてもそれは人間の時間感覚を超越している。大地の上の文明は喪失しても大地そのものは消えることがなく人間は以前として生きることができるのだ。
石油がないからと石油を資源をめぐり戦争するのは文明が文明に頼り巨大化した結果、石油なしでは人間は生きられないと妄想しているだけなのである。現実に石油なしでも人類は生きてきた。ここ一世紀だけが石油の時代だった。文明はあくまでも人間の作ったものでありその知恵は限られている。創造主の神の作った地球や太陽や宇宙こそ無限のエネルギ-の基なのである。神のエネルギ-は無尽蔵であり尽きることがないのである。人間の知恵では決して推し量れない神の領域があり人は万物はそれ故に生かされているのだ。
記憶は心の地下の深層に眠っている
時に黄金やダイヤモンドのように輝き出す
記憶は一つ粒一粒真珠のようなもの
その一つ一つをつなぎ首飾りにする
老人となればもはや思い出は金では買えない
その記憶したものが人生になる
その記憶を紡ぎだしてその人だけの織物を作る
その織物は後の記念となり飾られる
人は還らぬ過去に涙を流す
人生の貴重なる時はたちまち過ぎぬ
青春はたちまちすぎて白髪の老人となり
ただ思い出のみが残される
思い出は甘美な熟した果実のようになっている
しんしんと冷える雪ふる冬に思い出は深まりぬ
人生はその人だけのかけがえのない織物を作ること
あなたの思い出は美しく豊かなものとなるのか
あなたの歩んだ人生によりて決まる
記憶は偽ることはできない
罪の思い出は重くのししかかるだろう
払いきれない重荷となるだろう
あなたの行為は魂のなかに刻まれている
例え人に知られずとも記憶されている
人生の成果はみな金により報われるとはならない
その魂に記憶されたものが成果である
罪も記録され善も記録されている
記憶と思い出の中に人生の実りがある
記憶の深層に眠っているものが
ある時目覚め黄金やダイヤモンドのように
己が心に眩く輝きだして蘇る
花はそよ風にゆれてさく
人の世のことは知らざるごとくさく
夏の日に日がな風にそよぎゆれぬ
風に吹かれ揚羽蝶たまゆら舞いつつ去り
ああ、美しい夏の日、夢見心地に咲く花よ
やがて花は下の影なす石にちる
石はその花を受けとめるのにふさわしき
石は乱れなく邪念なければ
その花を受け取り静まりぬ
悪を成さざる石
その石の他者を傷つけじ
その石の偽りを言わじ
その石に悪念生ぜじ
千歳の石こそ祀れ
しんしんと雪こそふらめ
残れる雪の浄らかさ
人の悪は念より生ず
その悪しき念の収まることなし
その石に悪念生ぜじ
ゆえに悪を成さざり
小鳥来たりて鳴く声を聞きつ
かたえに可憐な花の咲き
常なる謙虚さのここにあり
夏になれば日陰に休らふ
その石の森の奥にし鎮まりけるかも
正直者の頑固な石
正直者は頑固だ
世の中みんな嘘ついているよ
嘘なんかついたってどうってことないよ
そんなことはねえ
わしは嘘はつかねえ
だから馬鹿なんだよ
楽して生きろよ、得して生きろよ
今の世中は金だ
金をもうけなくてはなんにもならん
金のねえやつは相手にされない
こつこつ働いても金にならんよ
正直者は馬鹿を見る
盗んだって金があるやつは得する
でもそういう人は嘘つくようになる
どこかで辻褄があわなくなる
やっぱり真っ直ぐな樹のように
石のように正直で頑固なのが
一本筋が通っている
ヒュ-ヒュ-と風が唸り黙る
石は嘘はつかない
軽挙盲動はしない
正直の頭に神が宿る
そういう人は神様も見ている
死んだあとも清々しい
星のように天で輝いている
その回りにも清らかな星々が輝いている
輝く星の仲間となった
地上は汚れているけど
今はその魂は天に昇り
清らかに仲間ととにも輝いている
ゆったりといつまでもそこにいたい
なぜそんなにみんな急ぐんだ
石のようにどっしりと動かない
大地に深く根を張り
樹のようにじっとしていたい
そうしてじっくり仕事をしたい
次から次と変わる
それが人の心を不安定にする
季節の進むはゆるやかだ
まだ春北風(はるきた)が吹いて寒い
でもゆっくりとぽかぽかと春の日が照ってくる
福寿草も光を一杯にあびて咲きはじめた
石は余裕をもってただ在る
みんな余裕がなさすぎる
余裕のない人は必ず他者を乱す
まともな仕事はできない
人間に必要なのは長い付き合い
信頼を培う長い時間が必要だ
急いでは何も成らない
じっくりと時間をかけた仕事
人間も即席には作れない
人は互いに余裕がなければ和むことができない
石や樹のように山のように
どっしりと千歳の歳月の中に休らぐ
時間の単位は一年が一〇年くらい
人も一〇年くらい勤めないとものにならない
一年くらいでやめて転々とする
時間に消耗される忙しい現代
時間の中で成長するものがある
樹は一年で一ミリとか成長している
そういう悠長な時間の作用
その中で育まれるものこそ
未来の礎ともなる
失われし時は帰らじ
金にて時は贖えざるを
貴重なる時は失われしを
ただ一度の人生よ
汚れしものの悲しからずや
そは何を見て生きしや
その瞳に写りしは何ぞ
若き日の清らかなる瞳にあれ
直ぐなる心にあれ
若き清らかな美しき日は帰らじ
若き日よ、悪に染まるべからじ
人はただ汚濁にまみれ
いかに穢れ罪深きかも知らじ
そが瞳に写りしは何ぞ
忘れな草やすみれの花
そが脳裏に深く刻まれありしを
偽らざる誠の日々を過ごせ
粛々と磐のごとき日々を過ごせ
若き日の情熱と清廉さを保て
青春の日々は二度と帰らじ
時は過ぎやすく失われやすし
罪は深く魂に刻まれありしを
何をもっても贖えざるを時の重みよ
老年はただ思い出のみ残りぬ
そが瞳に写りしは何そ
そが人生の心に刻みしは何そ
その心は偽れざるを
老年はさらに磐のごとく粛々とあれ
その岩のかたわらにつつましく花は咲きしを
美しき日よ、永久にあるべし
神とともに歩む日の永久にあるべし
今際のきわにも美しきものを見るべし
看護婦の手はあたたかく見つめる瞳は清し
死をみとるものは清くあるべし
人はものにはあらじ
魂を持ちて最期まで生きるものなれば
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