阿武隈高原の回想の旅の短歌
(阿武隈高原の魅力は幾重にも分かれた道にある)
(飯館)
月館へ行く道遠し夏の日のなお明るしもまた行かむかな
(三春)
三春なれしだれ桜の長々と夕日のさして古き家かな
三春なる城の跡かな四方の山ここに映えつつ春の夕暮
五万石三春の城や栄えなれ愛姫(めごひめ)嫁ぐ政宗のもとへ
なお夕べ優艷にして滝桜匂いのつきじしだれけるかな
目に見ぬも我が心にそ離れても花の明るく映えて輝く
(二本松)
二本松道のり遠く相馬よりなお花残り夕ぐるるかも
二本松安達太良まじか椿映え残れる雪の清しかりけり
安達太良の影の大きく川俣を我が去りゆくや秋の夕暮
(小浜城跡)
小浜城夕べあわれも遠く来て花咲きそめて闇のつつみぬ
小浜城興亡ありぬ一時は政宗棲みぬ秋の夕暮
小浜城滅びてのちの久しかも雲に隠りて月の光りぬ
小浜城落ち延び遠く会津へと逃れる武士や曇る月かな
(梁川城跡)
丸森ゆ峠を越えて梁川の城跡に来れば花は散りにき
阿武隈高原は広い、高い山もないし温泉もないけど広い、だから自転車で行けば旅になる。どこまでも道をたどることが旅なのである。だから旅では別れ道が一番印象に残るのである。分去(わかれさり)という地名が全国に残るのはそのためである。つまり別れ道に来たとき道を一番意識するのである。これは車だとそうした旅の感覚はなくなる。
道をたどるというよりただ早く移動するという感覚になるからだ。車の旅はある地点に行くのにはいい、例えば富士山が一番良く映える場所に行くのは車がいいが車では旅にはならないのだ。旅をするということは現代では特殊なことなのである。
バイクでも旅にはならない、バイクも早すぎるからだ。どっちの道へ行こうかとか旅の感覚はなくなる。車とバイクの速さは同じだからである。自転車は旅になっている。
ただ自転車でも早すぎるということはある。ただ別れ道などでは道を意識するから旅になる。実際に分かれ道があったとしてそこから5キロで温泉があるとして行きたくても行けなかった。なぜなら5キロとして往復10キロになるとかなり遠くなるし疲れるからだ。
車だったらこういうことはないから秘湯めぐりなどには向いている。
旅する時はやはり歴史的な知識も必要である。小浜城についてはわからなかった。勘違いしていたのはこれが江戸時代もあったと思っていたのだ。この城は江戸時代前に廃城になっていた。だから城の跡としてだけこれまで残っていたのだ。その期間は400年とかにもなる。だから良く残っていて今も訪れる人があると思う。城跡でも土塁だけとか堀とかでわからないのがあるからだ。相馬藩の城でも堀とわずかな石垣しかないのである。
だからあそこの城が江戸時代もあると思っていたのである。これは小さな城でもそれなりの城だった。なぜここにあったのかも謎である。地理的な要衝としてあったともある。
この頃会津までもこの城にかかわったりしている。だから伊達に攻め落とされた時、会津に逃れた武将がいる。梁川城も伊達領の城だが一時は会津の城にもなっていた。それから上杉もかかわっていた。戦国時代はどうしてか遠くも関係してくる。まだ領地が確定していないからせめぎあいが各地で大規模にあった。入会地で山林資源の争いのことを飯館村の飯樋のことで書いたが丸森の玉野村は大規模だった。その時合力が行われて上杉や伊達や相馬と三つ巴の争いとなった。
ともかく小浜城は何か神秘的な場所にあった。あのうよな出城とか小さな城でも江戸時代前は各地にありそれが戦国時代だったのである。
1627年(寛永4)に、一国一城令に基づき廃城となった。現在、本丸跡など城域の一郭は下館山児童公園として整備され、郭、石垣、帯郭、堀切、土橋跡などが残っている。かつての本丸南側の虎口である同公園の入り口に残る石垣は、蒲生氏郷の属城となっていた時期につくられたものである
阿武隈高原でもふりかえると自分は自転車で相当に回っている。今になると回想するとき不思議である。回想する旅になるとこれまた現実旅しているのとは違う、それは何か内面化した旅ともなっているのだ。だから旅というのは何度も言っているけどあとで記憶されている旅をしていないとほとんど忘れる。どこをどう行ったのかさえ忘れる。
自分も回想して短歌を作ったりしてもそれが春だったのか秋だったのかわからなくなる時がある。ただ回想しやすいのは近間だからである。これが阿武隈高原から離れて会津の方になるとわかりにくくなる。人間は自分の住んでいる場所から離れれば離れるほど忘れやすい、だから外国のことはさらに忘れてしまう。福島県でも会津はかなり遠い。そして山国だから余計にわからなくなる。
阿武隈高原だと二本松とか梁川とか福島市とかまではつづいて記憶されやすい、でも会津になるとすでに地理的にも記憶しにくくなるのだ。
阿武隈の魅力は道にある
http://www.musubu.jp/abukumichimiryoku.htm