
雀が持っているもの
雀はちょこちょこ塀を歩み顔を出す
そこに白椿が咲いている
そのあどけない顔がなごみとなる
雀はなにもまとわないし何ももってこない
すずめはただあどけなさをもってくる
雀は光の金の衣をまとい
あとは何も身につけない
野原にはタンポポが一面にまばゆい
その野の絨毯の上でまろび遊ぶ
寒さをしのぎ春がやってきたから
雀は寒いときも何も身につけない
ひゅ-ひゅ-と風が吹きつけても雪がふっても
雀は毎日少しの食べ物で満足
それは神の御意により与えられるのだろう
雀は謙虚であり威張らない
いつもペコンとお辞儀する
雀は庶民であり貴族ではない
雀同士で仲がいい庶民である
人間はあまりに多くのものをもちすぎた
死んであの世に持ってゆくこともできなかった
雀はあれもこれも欲しいとやってこない
ただ今日一日の少しの食べ物がほしいだけ
雀は道端で死んでいた
誰もふりかえるものなく死んでいた
でも雀は神の掌(てのひら)で安らかに眠っている
雀は人間のように様々な欲にふりまわされることがなかった
だから今は神の掌で幼子のように安らかに眠っている