2009年03月15日

映画-「殯(もがり)の森」を見て


 

 「殯(もがり)」とは、敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間や場所を意味する言葉
 
亡き妻の思い出の詰まったリュックサックを、そうとは知らず何気なく手にとった真千子を、しげきは突き飛ばしてしまう。
 
認知症がどういう病気なのか理解しないとこの映画もわかりにくいだろう。認知症の人は何かを思い出になるものを特別大事にする。姉もそうだった。戦友からもらったパッグを肌身話さず持ち歩いていた。それは従軍看護婦をして4年間シンガポ-ルで過ごしたことは死ぬまで忘れなかった。そこで一番親しい人からもらったパッグを大事にしていた。戦友とは認知症になる前までつきあいがあった。認知症になってからは年賀状をもらっても返事が書けないので音信が絶えた。バッグには貯金通帳やら保険証やら大事なものが入っていたのでそのパッグをなくしたと毎日のように騒いでいた。親しい人の家に行ってもここでなくしたと責めて迷惑をかけた。この映画で認知症のシゲキもリュックサックを大事にしていた。その中には思い出の大事なものが入っていた。それを手にとって捨てようとしたときシゲキは怒ってつきとばした。そのことは認知症の人と接していれば理解できる。
 
認知症の人は今の記憶が失われ過去に生きる度合いの方が大きくなる。過去に執着して語り行動する。病院の認知症の人もそうだった。二〇年前の死んだ夫のことを死んだと思っていない、毎日「とうちゃん、とうちゃん」と呼んでいた。何度死んだと言ってもわからなかった。他にも認知症気味の女性が看護婦を孫と思って名前を呼んでいた。この映画でも真千子は妻になっていたのかもしれない、この映画では死別もテ-マとなっている。死んだ人とは永遠にあえない、永遠に会えない人を求めて森に入り込みそこで最後に穴をほり死んだ人をいとおしむ。それがもし現実としたらあまりに悲しいとなる。死んだ妻を求める、永遠に死んだ人は帰ってこない、その死者への想いは人によって違う、やはり若くして死別すればなかなか忘れられないだろう。人間は六〇以上とかなると新しい人間関係を結ぶのがむずかしくなる。だからこれまで親しかった人がよりどころとなる。認知症の人は今が記憶できないのだから余計にそうなる。ただこの映画のテ-マで森の中で死者をいたみ死別の悲しみが癒されるとは思えない、森の上のう方を見ている真千子は作りすぎている。その他そんなに作りすぎた不自然でもなかった。そもそも自然は無情ではないか、自然は人間の死に無頓着であり、もちろん生物や動物の死にも無頓着であり非情なのである。森に入って死別の悲しみがいやされたりそこで何か死別の解決方法はないだろう。
 
「殯(もがり)」とは、敬う人の死を惜しみ、しのぶ時間や場所を意味する言葉
 
この言葉は意味深である。しのぶ時間、場所が大事である。それを美的に構成した。でも人間を偲ぶことと自然を偲ぶことが一致するのかというと死んだ人を思うときどうしてもその人の面影や格好や人格的なものに想いをはせる。そして認知症になると自分が一番存在し執着した場にこだわる。男は会社に行くとかグル-プホ-ムが会社であり介護士は部下だと思っているのはそのためである。会社が人生だったのである。人間は言葉が通じなくても心を通じさせる方法はある。スキンシップであり体で通じ合わせる、それが認知症の人にとっては介護となっている。心も安らぎ落ち着かせる方法だからである。今でも姉と病院に入ってからリハビリなどでスキンシップしたことが思い出に残っている。あまり家族でも体をふれあうことがないが介護になると体をふれあうことが自然と多くなるからだ。 過去にはしのぶ時間を十分にとっていたし場所も自然が豊だからそういう場所で偲ぶことができた。今はそうした時間も場所もないから死者はいたむ文化が喪失している。死者はいむものとして早くモノのように廃棄されかたずけられる。生きているときあれだけ介護しているのに一旦死ぬと早くかたずけてくれ、不浄なものとしてこの世から早く消すことが望まれる。この映画はやはり認知症のことがよくわからないと理解しにくいだろう。死別もテ-マになっていたが死別がどうして癒されるのか、美しい森の中でいやされるのか?そうはなっていないし死別の悲しみはいやされるのは何かまた別なものであろう。ただ死者は美化されやすい、本当にそんなに死者は理想的な人だったのか、死んだからこそ美化されやすい、いい面ばかり見えて悪い面は消えてしまうから自然と一体となり美化されたものとしてイメ-ジされてくる。それで祖先は山の神となり村に恵みを与えるとかなった。そういう日本的死者の文化もこの映画のテ-マとなっていたのだろう。


 

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