2021年01月17日

みちのくに冬深む(家に死者を偲ぶ短歌十首)


みちのくに冬深む(家に死者を偲ぶ短歌十首)

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地の底に眠り入るかな冬深む

地の底に地上の音絶え冬深む

地の底に記せしものや冬深む

地の底に隠さるものや冬深む

みちのくの王の眠るや冬深む


冬長く母はありなむ我が家になほともにしも籠もりけるかな

六〇年我が家に嫁ぎこの場所に母はありにき冬深むかな

我が一人家を守るや冬深む母なほここにありしと見ゆる

我が家に今日もいつつも冬深む亡き人なほもここに偲びぬ

しんしんと冷える夜かな我が一人家にしありて亡き人しのぶ

もの言わぬ死者にありしもなほ家を離れずここに堅くあるかな

我が一人家に籠もりて冬深む姉と母なほここにありなむ

死者なほも家にありなむ冬深むストーブの火のあたたかきかな

みちのくや芒の枯れて蕭条と老いあわれ過ぎゆくときの遅かるべしかな

ふるさとに根付きし樹々の争そわず今日も通りて冬深むかな 
                          

何か家のことを書いてきた、家族のことを書いてきた、家族がみんな死んで一人家にいるするとかえって家族のことや家のことを思うようになったのである
母は私の家に嫁いできたけどあまりいいものではなかった
いい待遇はされなかった、そしてもともと目立たないからいるかいなのかわからないような存在だった

なぜ自分が今こうして死者を偲ぶようになったのか?
それは六〇年とか長い間一緒に暮らしたからである、その長さのためだったのである
結婚して外に出た娘とか息子でも一緒に暮らさないと疎遠になる
私は特殊な事情で一緒に暮らしていた、ただ姉から比べると内向的で目立たなかった
だからその存在を意識しなかったのである

でもつくづく嫁は女と家なのである、つまり死んでも依然として家にいる、家と一体化するのである、そのことは生きている時は感じなかった
死んでから感じたというのも不思議である、死んでから存在感が増すということがある
生きている時は空気の様なものとしてあるから意識しないことがある
いなくなって意識するということが人間にはある
見慣れたものでもそれを意識しない、でもそれが無くなるとあったものがないなとかえって強く意識することがある、それと似ている

別に母でも死者でも理想的な人でない、欠陥があり生きている時はいくら母でも肉親でも嫌な所がある、だから理想化はできない、でも死ぬと死者は何も語らない
何か死者は堅くなっている、石のようにも感じる
それは死者が口をつぐんで語らないからである、語るのは生きている人なのである

冬深むというとき今頃が一番季節的に合っている、ものみな静まり家に籠る
本当に私は旅にも行かないし外に出ない、冬になると自転車だと寒いと出にくい
だから家に毎日籠もっているだけだとなる
ただ雪国ではないから寒さがゆるみ風がないと出かけるのである

冬深むというときみちのくが合っている、枯野の風景がみちのくにあう、西になると東京から西なると家も多くなり人も多くなり騒がしくなるからだ
みちのくは未だ荒野の風景がある、それで心を休めるのがいいのである
みちのくは癒しの空間でもある、東京にいるだけですでに心も消耗して疲れるからである
ただみちのくと言っても広いから一つのものとしては語れない
それぞれの県でも地域でも特徴があるからだ、ただみちのくということで一つのアイディンティティの場にはなる

みちのくの王の眠るや冬深む

これは平泉の藤原氏の長(おさ)だともなる、冬深むみちのくに深く眠っているとなる
そこは京都のような都ではない、荒野の中に埋もれた小さなみちのくの都なのである
その相違が大きいとなる

ともかく冬は休みのときである、活動を停止するときである、自然もそうである
ただ冬(ふゆ)は増ゆであり増えるなのである、野菜でも冬の方が育つと言っている
それは実際に農業している人から生まれた言葉なのである
季語はたいがい実地に生活する感覚から生まれたからそうなる
風流ということではない、日々の生活の中から生まれたからである

現代は活動が過剰になっていた、それでコロナウィルスでそれを止めた、つまり冬は休む時であり英気を貯える時期でもある、それが都会にはない、活動が止まることがない
それで疲れるのである、人間も自然の産物だから自然に合わせて生きるべきなのである
ただ農業は本当に骨がおれるからしたくないとなる
でも実際は農業を知らないと実感しないと田舎というのがわからないのである








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