2018年05月14日

中山道の旅初夏十句 (歩く旅は記憶している)


中山道の旅初夏十句

(歩く旅は記憶している)


奈良井宿奥にあわれや藤の花

山吹や中山道に分け入りぬ

武者幟山中行くやひびく川

山吹やしとどにぬれぬ山の道

山吹やしとどにぬれて山伏の碑

初夏や雨に煙りぬ木曽の森

山中に分け入る道や木下闇

岩の渕浦島伝説藤の花

(福島関所)

止められず関所越ゆるや夏燕

妻籠宿ひびき落つ水涼しかな

古りにける妻籠の宿や菖蒲かな

上り行く馬籠の宿や夏の山

確かに旅したのは山吹の咲いているときである。この時は電車の旅だったが途中歩いたりした,その歩いたところが記憶に残る
ただ記憶というのは不思議である。中山道は夏と秋に旅している
それが記憶の中で混乱する,秋に旅したのは自転車だったからである。
記憶たどるたびの不思議は時間的に順序が不明になる
それは例えば江戸時代の年号があってもその年号に何があったか不明であり
年号の順序を間違える,ただ元禄というとき何か目立っている時だからわかるがその他いろいろ年号があってどっちが先なのか後なのかわからなくなる
なにかそれとにていていつ旅したのかその時間の順序がわからなくなる
それは30年とかすぎてみるとわかるのである。

奈良井の宿に泊まったことは覚えている,その部屋の奥に庭があり藤の花が咲いていたことを覚えている,それから奈良井の宿から鳥居峠を上ったとき雨だった
それで深い木曽の杉林が森に煙る景色を覚えている,その時森が深いなと感じた
鳥居峠はさらに奥であり歩いていない
鳥居峠の入り口に山伏の碑があった,山伏の関するものはいろいろ残されている
山伏も旅する人でありその伝説が残されている

電車の旅だからとぎれとぎれに歩いた,最初は山吹が印象に残った
次に妻籠ではここも結構長い道を歩いた,それでその道に菖蒲が咲いていたことを思い出した,その紫の色が心に沁みた,それはなぜか、歩いていたからなのである。
このように歩くことは心に記憶されるのである。
だから旅はまず車だとかバイクだとか自転車ですら記憶に残りにくいのである。
歩くことで記憶に刻まれるのである。
現代の旅は何か電車だとか車だとかバイクだとを利用した旅である
すると記憶に残らないのである。何十年と過ぎたときさらに記憶に残らないのである。
だから旅すらなら歩くべきだと反省する,中山道は歩くにはいい道だからである。
まず東海道などは昔の面影がない,中山道だけは昔の面影が残っているからである。

歩くときはこの辺だと街道を歩くのはいいが六号線を歩いても記憶に残らない
それはどこでもそうである。街道を歩まないと記憶に残らない
何か車の洪水にまぎれ記憶に残らないのである。
現代はまず便利だからその便利な乗り物でも利用すると旅として記憶にも残らないのである。
一区間だけでも昔の旅人のように街道を歩くことである
その効果は意外と大きいのである。旅は計画することと旅を実行しているときとそして意外と後でふりかえる回想することが大事になる
でも記憶するには歩くかしていないと記憶に残らないのである。
芭蕉でもみちのくを歩いて旅したからこそ「奥の細道」ができたのである。

都会とかはほとんど記憶に残らないのはなぜか?
喧騒と雑踏にまぎれて人も景色も記憶に残らないのである。
何か大都会になると蜃気楼のように見えてしまうのである。
それは日々の生活でもそうである。都会の生活はあとでふりかえると記憶に残らないのである。回りの景色でもそうである。
そこに生の充実がありえようがないのである。
でも経済的観点から都会の方が便利でいいとしているのである。
ただ最近若い人が田舎で暮らしたいと移住しているのもわかる
人生を充実させるには田舎であり都会ではないからである。
もちろん田舎にもいろいろな問題がある,嫌なところも多い
ただ何か人生を生きるというとき都会に生きて何が記憶されるのか?
それを思うと都会だと車や雑踏や騒音の中に人生も記憶に残るものがなく消えてしまうともなる

いづれにしろ人間の基本は歩くことにある,武道でも空手でも歩くことを基本にして訓練していた人がいた,歩くことを文明人は奪われたのである。
それは実に脳に相当に影響している,外界を体で感じることができない
人工的空間で五感が衰退したのである。だから文明がいかに発達しても何か失われものは必ずある,ただ時代によって得るものも必ずあるとなるのが人間社会なのである。

俳句というとき一句だけではものたりないから自分は短歌でもそうだか十句十首として連作として作る,すると一句一首ではものたりないものが連作として読むと違ったものになる
奈良井宿辺りでは山吹が目についたが妻籠辺りでは紫の菖蒲が目にしみたとなる
その対象で一連の俳句を鑑賞できるともなる

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