
朴の花
朴の花の広葉の風にそよぎけり
朴の花の地を知らじかも
白き大輪の花の天に向き咲く
磐にひびけはじける水音さやか
ただ清しく風のわたるや
山間深きも涼しく影なす谷間より
黒揚羽のいでて舞いわたり消ゆ
山鳩の番いの鳴いて森の深しも
風はそよぎて深き緑に鳥は眠りぬ
朴の花夕べ静けく隠さる村や
牛の啼く声の聞こえて暮れぬ
人よ、何をし求むもむなしきや
ただ地を知らず咲きにし花こそよけれ
炭焼きの煙に素朴なる暮らしの昔
市の暮らしの徒なる浪費の時よ
塵埃にまみれて過ぎ去りし時よ
そはただ世に使われしのみなり
千歳の磐のごとくにそこにあるべし
そは何も成せず成さざるべし
朴の花は地に咲くにあらじ天に向き
その純白の大輪の花を咲かしむ
神の御旨はそこにあるべし