医療でも体が悪いのは一部分が悪いのだからその一つのパ−トを手術して取り除けばいいとなる。西洋思想では世界はパ−ツの組み合わせでありそのパ−ツの元は何かとなり原子まで行き着いたのである。現代の日々の仕事はパ−ツ化したなかで機能している、ある市営の観光案内所でその人の担当以外の地域は何も答えない、私の担当以外だから知りませんとつっぱねる。これはどこの仕事場でも日常的に起こっている。このパ−ツ化された世界からナチスが生まれたという思想家もいる。人殺すことでも事務処理するようにその仕事に忠実だった。これは先の日本の戦争でも役場の職員が何の疑問もなく赤紙を配り戦場に送ったということともにている。一人の命がかかっているのだがそれは単なる数字を処理すると同じになっていたのだ。
介護の問題は何よりもト−タル(全体)な問題だ
介護は一人の人間全体にかかわるからト−タルなものとしてみないいけないから現代的なパ−ツ化した労働とそぐわないのだ。妻が夫が認知症になったりすると特に若年性アルツハイマ−になったりする日記をよむと感心する介護をしている人がいる。認知症などはきく薬などもないしある部分が悪いからそこを取り除いたり部分を直せば直るというものではない、水頭症などは脳の手術で直るようだがほとんどの認知症はその人に対するト−タルなかかわりが要求される。そしてパ−ツ化した社会ではこのト−タルにかかわるということが一番むずかしいことなのだ。
常に部分的な仕事とか生活も細分化されていてト−タルにみるということができない社会で生きているからだ。家庭はト−タルな場として生活することに意味がある。家事はト−タルなものとして家庭を支える。料理するのもそこには妻や母親の愛のこめられた料理であり家庭は愛の場であり部分化して金をもらう場所ではない、ヘルパ−に頼めば料理すること洗濯すること、掃除することと仕事が分けられ金が請求される。極端になれば会話した場合はいくらとかもなる。あらゆる行為がパ−ツ化され金で計算されることになる。これは介護の仕事には向いていないのだ。ト−タルなものとしてかかわることが介護には要求されているからだ。
そしてなぜ介護がめんどうなのか、例えば介護は今は施設とか制度とか組織化される。しかしこうしたことにも介護はなじみにくい面があるのだ。その例としそもそも介護を受けられることが知らされていないとか知識がなくて介護サ−ビスが受けられないとかあるのもそのためである。また介護認定も不公平なのはその人のことについてト−タルにみれないし日頃みていないからわからないためである。書類審査だけでもわからないし一回の訪問だけでもその人となりをト−タルにみることがむずかしいから不公平な判定になるからだ。生活保護が受けられず殺人までになったのもその例であった。
施設とか制度とか組織化しても肝心の人間が介護には大事になる。特養での虐待とかが日常的なように安い賃金でその場稼ぎのアルバイトにやらせるような仕事が介護ではないからむずかしいのだ。介護は施設化とか制度化だけでは解決しにくいところがある。ハタラクは端(はた)を楽にさせるという時、それは身近な家族とかで端を楽にさせたいということが働く動機だった。そういう動機付けがかなり大事である。今働く場がないから介護で人手不足だから働こうという動機ではうまくいかない、愛のためだとかそういう高邁なものはなくてもいいとして全くそこには介護にはそぐわない動機なのである。やはり家庭ではそこで長い間暮らしてきたのだから介護する動機をもつ、親を自分のためにいろいろしてくれてとか普通にもっている。
今我が家で手伝ってくれている人は親戚というのではなく病気のとき大変な世話したからである。これも介護にはいい動機である。介護は賃金労働だけではできない、動機が大事であり人間全体をト−タルにかかわるものだから施設化、制度化、組織化してもほんの一部をのぞいてはうまくいっていないのはそのためである。施設だと建物を提供するだけではない、家庭のようにト−タルな人間生活の場として人間をみなければならないから建物を用意しただけでは介護にならない、そこにはそこにふさわしい動機をもった介助する人も必要になる。
それは賃金労働だけではむずかしいから問題が起きる、虐待も起きるとなる。高齢化社会は介護とかはト−タルにかかわることが必要となると社会もパ−ツ化部分化した社会を変える必要もでてくる。一方介護社会そのものへの疑問もでてくる。介護社会になること自体が異常なことかもしれないからだ。不具者の思想、優生思想の危険は少数者だったら成り立つが不具者が多数になったらとをなるのか、変な話が病気でない人間は社会で差別されるという奇妙な結果になってしまうからだ。ともかくト−タルなことを目指すのは芸術であり宗教であり介護もそうだったのである。
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