2006年08月15日

ボケ老人の墓参り(お盆の小話)

 ボケ老人の墓参り


 ボケ老人の墓参り

お盆で千賀子は花を買って墓参りに行った。次の日も墓参りに行ったきたという。
「昨日墓参りに行ったべ」
「行かねえよ」
「昨日確かに行ったけどな」
「行かねえから今日行ったんだよ」
「・・・・・・・・・」
息子の勝男はまた忘れてしまったと黙ってしまった。
看護婦をしていたとき世話した人がいろいろ助けてくれる。その人が家にきて掃除や料理などしてくれて帰ったのだがその人が来たことも忘れていたのだ。「夏子さんが来てくれて助かるよ、おれえの家では親戚ないからな」
「夏子、いつ来たの、オレは会ってねえよ」
「この前来てくれたし何度も家に来て手伝ってくれているんだよ」
「そう言ったって会ってないから通じないんだよ」
「・・・・・・・・ 」
これには勝男も困った。世話になった人のことも忘れてしまっては世話する人もがっかりするだろと思ったからだ。この病気はまるっきり忘れるから忘れたことを言うと怒るから困る。夏子さんと会っていないと言ったときそんなこと言ったって会っていると言うとオレは絶対に会っていないと怒る場合があるのだ。まるっきり忘れているからこれは問いつめると悪いのである。

墓ではかわいがった千賀子の父親が墓の中でささやいていた。
「千賀子、オメエ、昨日墓参りに来てまた今日も来たな」
「私は昨日はきてねえよ、だから今日来たんだよ」
「昨日確かに来たよ」
「私は昨日は来てねえよ」
「まあ、二回も墓参りに来てくれたからありがたいな、オメエは親思いだったからな・・・」
墓の中で千賀子の父親はいぶかっていた。
「どうも千賀子も年取って変な病気にかかってしまったらしい、まるっきり自分のしたことを忘れる病気らしい、年取ると忘れやすくなるんだがこの忘れ方は普通じゃない、・・・かわいそうだ、困ったことだ・・・まあ、いづれ死んだらこの墓に入る、そんときは忘れた病気のことも忘れるだろう」
息子の勝男はいつもその墓の前を通って買い物に行っていた。
「勝男がめんどうみてくれるからいいだろう、勝男が頼りだからよろしく頼むよ」
この墓は町の中にありお盆で線香の煙がたえなかった。勝男はいつもこの道を通って自分の家の墓の前を通るからそのささやき声も墓から聞こえたのだ。
ともかく5分前のことも忘れる病気なので困っていた。これを直す方法がなかったのだ。墓の近くには木槿が咲き蝉の声がひびいていた。死んだ人も生きていて何かを語りかけてくる。それが人間の営みであり墓もまた過去と現在と未来をつなぐものとしてあるのだろう。勝男は今日もその墓の前の道を通り買い物に行っている。でも千賀子は夕方になると不安になるのか家の前で待っていたりこの前は帰って来ないとか何にもないからパンを買ってくるとパン屋まで歩いて途中で自転車で帰って来た勝男にあったのだ。5時半で明るいのに道にでて勝男が帰るのを待っていることもあった。この病気は夕方になると不安になるらしい、勝男は千賀子から離れられないので困っていた。その他はそれほど今は困ることはなかった。

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